愛犬のしつけ方

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俺の名前は花房夏鐘。27歳。フリーランスのWEBデザイナーをやっている。仕事も軌道に乗り、今は順風満帆。しかし、いつのまにか、俺の住むマンションの部屋には大型犬が住み着くようになってしまった。 「かーしょーうさん」 呼ばなくてもこちらに寄ってくる。少しばかり面倒な大型犬だ。俺をキラキラした目で見ながら無い尻尾をブンブンと振り回している。 一瞥した後、特に気に留めずにいると、椅子に腰かけパソコンをいじる俺の腰に腕を回し顔を擦り付けてくる。 「おーい、鈴音。顔をすりつけてくるな。」 この大型犬の名前は葉山鈴音。21歳。俺が担当するホームページ作成を依頼してきた、保育園の先生だ。 「すいません!夏鐘さん!」 とにかく、保育園児には知られたく無い関係性なのは間違いない。 「すいませんと思ってるのならこの手をどかせ。お前んとこのWEBページ仕上げてるんだから。」 「すいません!でもこうしてるとあったかいし、夏鐘さんの匂いも感じられるし、最高なんです。」 目を輝かせるな。最高とかそんなこと知ったこっちゃ無い。顔が言い分抱きつかれるこっちの身がもたない。 「なあ、鈴音。お前、園児のママさんたちに人気あるんだからそっちに愛想振いたらどうだ?たちまち噂が広まって、お前のいる保育園大人気だぞ?」 「嫌です。僕は夏鐘さんに愛想を振りまいていたいんです!夏鐘さんじゃなきゃダメなんです!」 若さは怖い。溢れ出る感情を抑えることなく重いの丈をぶつけてくる。簡単に感情を出せなくなってしまった俺には少し羨ましいくらいだ。でも待つことを覚えた方がいいこともある。 「あのな、鈴。待てだ。わかるか待て。」 見えない犬耳がピーンと立ったように見えた。 「そう、待て。わかるよな?よしって言うまでおとなしくすること。よしって言ったら、お前を十分甘やかしてやる。いいな?」 「はい!夏鐘さん!」 鈴音はどこぞの心霊番組に出る子役のように返事を返した。
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