第十五話「それぞれの思い」

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第十五話「それぞれの思い」

    1  その日、亜利紗は撮影で都外に出ていた。  帰宅は深夜の予定で、花衣から電話が掛かって来た時は、ちょうど遅い夕食休憩を取っていた。 「もしもぉーし。どうしたのー?」  いつもの口調で電話を受けた亜利紗は、花衣の「亜利紗……」といういつもと違う声を聞いて、表情を変えた。 「あの、いきなりごめんね……」 「え。何、どうしたの」 「その、ちょっと確認したいことがあって……」 「確認?」 「その……」  花衣は一瞬躊躇った後に、切羽詰まった声で訊ねた。 「亜利紗が産まれた病院って、静岡にあるM産婦人科医院てところ?」 「えっ?」 「ごめんね、変なこと聞いて。だけど大事なことなの」 「……私が産まれた病院が、どうかしたの」  一つの予感を覚えながら、亜利紗は逆に質問を返した。  花衣はそれに答えず、「今は言えないの。お願い、亜利紗。亜利紗の産まれた病院は、静岡のM産婦人科医院で合ってる?」と繰り返した。  嘘をつくことは出来ず、亜利紗は「そうだけど……」と答えた。  電話の向こうで、花衣の「ああ……」と重い息を吐く音が響いた。 「教えてくれてありがとう……」 「花衣っ……」     
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