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「ですが私の犯した罪は消えません。私の行いが許されるとは思いませんし、あの子に許されなくても当然だと思います。……私が憎まれるのは構いません。けれど、亜利紗のことは恨まないであげて欲しいんです。あの子は何も知らなかったんです。血を分けた姉妹と引き離されて、あの子もいわば被害者なんです」
「亜利紗さんは、花衣の双子の妹に当たる方ですね。花衣とは仲の良い友人だとか……」
「ええ。雨宮さんのモデル事務所で知り合って、すぐに意気投合したようです。……当然ですよね。双子なんですもの」
そう言って、華枝は力なく笑った。
「亜利紗もつい最近、事実を知りました。あの子にも随分と責められました。けれど花衣のことを思い、あの子はこの秘密は明かさずにいると、そう決めたんです。これからも友達として付き合い、けれど心の中では妹として一生姉を守ると……」
「そうですか。亜利紗さんはすでにご存知だったんですね……」
「はい」
「他にこのことをご存知なのは、あなたのお父様とご主人と……」
「……いえ」
「え?」
華枝は元の席に腰を下ろし、「夫は花衣の存在を知りません」と驚くべきことを言った。
「双子を妊娠したことを、私は夫にも祖父にも黙っていました。けれど病院の院長が、祖父にだけ報告してしまって……。ですから私が双子を出産したことを知るのは、病院関係者以外では祖父と亜利紗と、雨宮さん親子だけなんです」
「え!」
「……え?」
景一が声を上げるのとほぼ同時に、花衣の声も上がった。
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