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トイレで胃の中を空っぽにして来た花衣は、たった今聞いた華枝の言葉に、呆然とその場に立ち尽くした。
「花衣……」
振り向いた華枝は、戸口に立つ花衣を見て、その顔が険しくひきつるのを見つめた。
「今、なんて……」
亡霊のような顔色で、花衣は華枝に詰め寄った。
「このことを知っているのは、誰と誰だって言いました……? あなたと祖父と亜利紗と、雨宮さん親子って……」
花衣は自分が誰を前にしているのかも忘れ、鬼気迫る表情で華枝に問うた。
「亜利紗も知っているんですかっ!? そして一砥さんも、このことを知っているんですか!」
「か、花衣……」
娘の気迫に押され、華枝は青ざめた。
「嘘よ、デタラメ言わないでっ! 一砥さんや亜利紗が私に嘘をついていたなんて、そんなの私、信じない! 絶対に信じないっ……!!!!」
「花衣、落ち着いて、興奮しないで!」
香奈が慌てて花衣の肩を押さえ、景一も急いで立ち上がった。
華枝は真っ青になって、ただ小さく震えていた。
「一体これは、何の騒ぎだ」
そこに突如、高蝶泰聖が現れた。
花衣以外の全員が驚いて、いきなり現れた泰聖の方を向く。
ハッと華枝が見ると、扉の影に長年勤めているメイド長が控えていた。彼女が父に連絡したのだと、華枝はすぐに気づいた。
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