第十五話「それぞれの思い」

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 しかし亜利紗が次の言葉を紡ぐ前に、あちらから電話が切られた。  急いでこちらから掛け直したが、花衣は出なかった。 「もう、どうなってるの……!」  亜利紗は急いで、今度は一砥の番号に掛けた。  しかしこちらも留守電に切り替わるばかりで、一向に応える気配はない。  次いで奏助に掛けたが、これもまた無機質な音声ガイダンスが流れて来た。 「ちょっと、誰も電話に出ないとか、一体何なのよっ!」  ロケバスの中で金切り声を上げる亜利紗を、マネージャーがびっくりして見つめた。 「おい、どうしたんだ、亜利紗」 「ちょっと黙ってて! 今、緊急事態なんだからっ!」  次に亜利紗は、紫苑の番号に掛けた。  幸いにして、こちらはスリーコールで応えてくれた。 「もしもし」  いつもの冷静な声が応じ、亜利紗は「紫苑っ!」と悲鳴のように声を上げた。 「どーしようっ! 花衣が気付いちゃったかもしれないっ!」 「……どういうこと?」  そこで亜利紗が掛かってきたばかりの電話について話すと、紫苑は「ううん……」と小さく唸った。 「確かにそれはマズイ状況かもね。だけどどうして、花衣は事実を知ったんだろう」     
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