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しかし亜利紗が次の言葉を紡ぐ前に、あちらから電話が切られた。
急いでこちらから掛け直したが、花衣は出なかった。
「もう、どうなってるの……!」
亜利紗は急いで、今度は一砥の番号に掛けた。
しかしこちらも留守電に切り替わるばかりで、一向に応える気配はない。
次いで奏助に掛けたが、これもまた無機質な音声ガイダンスが流れて来た。
「ちょっと、誰も電話に出ないとか、一体何なのよっ!」
ロケバスの中で金切り声を上げる亜利紗を、マネージャーがびっくりして見つめた。
「おい、どうしたんだ、亜利紗」
「ちょっと黙ってて! 今、緊急事態なんだからっ!」
次に亜利紗は、紫苑の番号に掛けた。
幸いにして、こちらはスリーコールで応えてくれた。
「もしもし」
いつもの冷静な声が応じ、亜利紗は「紫苑っ!」と悲鳴のように声を上げた。
「どーしようっ! 花衣が気付いちゃったかもしれないっ!」
「……どういうこと?」
そこで亜利紗が掛かってきたばかりの電話について話すと、紫苑は「ううん……」と小さく唸った。
「確かにそれはマズイ状況かもね。だけどどうして、花衣は事実を知ったんだろう」
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