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高校生になると、メンバーはバラバラになった。運がいいのか悪いのか、アタシとナオは同じ高校、同じクラスだった。
張本さんが違う高校で、内心ホッとした。
高校でも変わらず、アタシはナオの男友達でいるつもりだった。
中学と高校の違いは色々あるけど、中でも恋バナを教室でする女子には驚いた。
その人が教室にいようがいまいが、彼女達は「〇〇くんが好き」なんて、平気で言う。
バレンタインの様なことが起きないように、アタシはいつもヘッドホンをするようになった。聴いてるのは、流行りの男性アーティストばかり。
別に好きってわけじゃないけど、一刻も早く好きな人を作りたかったからだ。
7月の上旬、奇跡はなんの前触れも無しにやってきた。
「あのさ、お前の事好きなんだけど……。付き合ってください!」
ナオは顔を真っ赤にして、勢いよくアタシに手を差し出した。
気を失いそうなほど嬉しくて、頭が真っ白になった。
「悪いけど、しばらく考えさせてくれ」
口をついて出た言葉は、それだった。
尚更わけが分からなくなって、気づいたらアタシは、走っていた。
誰もいない特別室トイレに駆け込んで、大きなため息をつく。
「なにやってんだ、アタシのバカ!」
自分でも信じられない愚行に、思わず叫ぶ。
考える必要なんか、どこにもない。
アタシだって、ナオが大好きだ。
「はぁ、どうしよう……」
告白なんてしたことも、されたこともない。
少女漫画だって、恋愛ドラマやゲームだって、無縁だった人生だ。
告白の返事を先延ばしにした時の方法なんか、知るわけがない。
「ホント、どうしよ……」
意味もなくスマホをいじり出した。
じっとしているなんて、今のアタシには無理な話。
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