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なんとなくGoogleを開くと、検索結果が少しだけ出る。
そこには自費出版について調べた履歴もあるそれを見た瞬間、アタシの中でアイディアが一気に広がった。
「そうだ!」
アタシはトイレから出ると、教室に戻った。
授業はもう始まってて、先生は慌ただしく入ってきたアタシを不機嫌そうに見る。
「先生、体調悪いから帰るわ!」
アタシはそう言って、机の横にかけてある、ヘッドホンとプレイヤーしか入ってないカバンをひったくるようにして取ると、教室を出た。
後ろからは「もっとマシな仮病を使えー!」なんて、妙なお説教が聞こえた。
アタシは家に帰ると、パソコンを起動させ、ワードを開いた。
小説を書くのなんて初めてだけど、これしかない。
タイトルは「お へ ん じ」。
アタシはナオが好きだと気づいた時の事を思い出しながら、キーボードを叩いた。
この日は早退しちゃったけど、続きは学校から帰ってから書くようになった。
いくら親が家にいないからって、ズル休みを繰り返すと、学校から親に連絡が来てしまう……。
たぶん、小説にしては短いんだろうけど、書くのは初めてだから、やたら日数がかかってしまう。
書けない日なんか、1行で終わってしまう日も。
それでもナオには、知ってもらいたいから。
だから包み隠さず全部を小説にした。
小説が書き上がると、アタシは印刷所にメールで作品を送った。
今の時代、1冊から製本してもらえるんだから、本当に便利。
もしナオが小説を読み終わっても気持ちが変わらないなら……。
アタシの重たい愛を受け止めてくれるなら、平気なフリしながら緊張しているアタシに、キスをして。
もし、気持ちが変わったのなら、この本をビリビリに破いて捨てて。
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