待ちぼうけ

2/4
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
教室の窓際から2列目の一番後ろが、俺の席。そこから窓際の列の後ろから2番目に座る、授業中にも関わらず、黒のヘッドホンを装着してる男女(おとこおんな)を睨みつける。 ここからは見えないが、今もいつもの様にすまし顔をしていると思うと、腹が立ってしょうがない。 このヘッドホン男女は、俺の幼なじみの山根真琴。通称マコ。 昔から男みたいな性格で、そのくせ文学少女でもある変な奴。 髪型の名前は知らないが、女にしてはかなり短く、男にしてはちょっと長く切りそろえられている。本人曰く167センチと女子にしては長身で、運動神経がいい。 自己紹介が遅れたが、俺は梨野直秀。高校1年の帰宅部で、あろう事かあの女男のマコに恋をした。 自分でも驚いた。 俺の好みは、黒髪ストレートが似合う大人しめな清楚系お姉様。 くせっ毛ショートで、ちょっとガサツなマコは、俺の理想とはあまりにもかけ離れている。 マコを好きになったきっかけは、結構単純な気がする。 梅雨の時期、いつもは俺とマコの他にふたりの男子がいるんだが、その日に限って、何故かふたり。 ボロのダンボールの中に、1匹の茶色い子猫が捨てられていた。 俺は「可哀想だな」と思っただけで、その子猫をどうこうしようとは思わなかった。けど、マコは子猫を抱き上げると、ボランティアで野良猫を保護している家に連れて行った。 それで終わるかと思いきや、マコは子猫の写真をスマホで撮るとネットで呼びかけたり、コンビニでプリントアウトした写真を学校の奴らに見せては、飼わないか?、と声をかけたりしていた。 そのおかげか、子猫はすぐに里親に引き取られた。マコはその事を、自分の事のように喜んで、目にいっぱい涙を溜めながらも笑った。 その笑顔に、俺はやられた。 不覚にも“可愛い”と思ってしまったし、“守りたい、大事にしたい”とも思ってしまった。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!