お へ ん じ

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アタシは女の子のくせに、昔から男勝りだった。 友達が魔法少女に憧れた時期、アタシは特撮ヒーローに憧れた。友達がおままごとをしていれば、アタシは虫取りをしていた。 いつの間にか女の子の友達はいなくなって、男の子の友達に囲まれた。 寂しいどころか気楽で、思いっきりはしゃげた。 誰に咎められることもなく走り回ったり、ケンカしたり、ゲームしたり……。洒落っ気なんてないけど、アタシにとってはどれもかけがえのない時間。 時間が経つにつれて、皆背が伸びた。皆、アタシとそんなに変わらなかったのに、頭ひとつぶん、ふたつぶんも大きくなった。 特にナオは、アタシと話す時はどうしても見下ろしてしまうくらいに。コイツ、小さい頃はアタシより小さかったのにな。 それでも、アタシらの絆が揺らぐことは無い。 それが嬉しくもあって、何故だか知らないけど、悲しくもあった。 悲しみの原因に気づいたのは、中学3年生の冬休み明け。 更衣室で体操着に着替えてる時、女子達の会話が聞こえた。 「ねぇ、最後のバレンタインだしさ、好きな人に上げちゃおうよ」 「えー、でもフラれるの嫌だし……」 「じゃあさ、男子全員に皆で作って、本命だけ豪華なの作るってことで」 「いやいや、本命ってバレるでしょ」 「当たりだったって言えばいいんだよ」 「何それ天才」 アタシには、関係ない話だって思ってた。けど……。 「で、皆本命誰?私関本くん」 「隣のクラスの城島くんかな」 「じゃあ隣のクラスも巻き込まなきゃじゃん」 「で、アンタは誰好きなの?」 「梨野くん」 クラスメイトの口から零れたナオの名前は、刃になってアタシの心を刺した。 アタシ、ナオが好きだ。 だから、変わらない絆が悲しかったんだ……。 気づいた瞬間、胸が苦しくなって、アタシは下はジャージ、上は制服のちぐはぐな服装のまま、更衣室を出た。
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