7人が本棚に入れています
本棚に追加
アタシは女の子のくせに、昔から男勝りだった。
友達が魔法少女に憧れた時期、アタシは特撮ヒーローに憧れた。友達がおままごとをしていれば、アタシは虫取りをしていた。
いつの間にか女の子の友達はいなくなって、男の子の友達に囲まれた。
寂しいどころか気楽で、思いっきりはしゃげた。
誰に咎められることもなく走り回ったり、ケンカしたり、ゲームしたり……。洒落っ気なんてないけど、アタシにとってはどれもかけがえのない時間。
時間が経つにつれて、皆背が伸びた。皆、アタシとそんなに変わらなかったのに、頭ひとつぶん、ふたつぶんも大きくなった。
特にナオは、アタシと話す時はどうしても見下ろしてしまうくらいに。コイツ、小さい頃はアタシより小さかったのにな。
それでも、アタシらの絆が揺らぐことは無い。
それが嬉しくもあって、何故だか知らないけど、悲しくもあった。
悲しみの原因に気づいたのは、中学3年生の冬休み明け。
更衣室で体操着に着替えてる時、女子達の会話が聞こえた。
「ねぇ、最後のバレンタインだしさ、好きな人に上げちゃおうよ」
「えー、でもフラれるの嫌だし……」
「じゃあさ、男子全員に皆で作って、本命だけ豪華なの作るってことで」
「いやいや、本命ってバレるでしょ」
「当たりだったって言えばいいんだよ」
「何それ天才」
アタシには、関係ない話だって思ってた。けど……。
「で、皆本命誰?私関本くん」
「隣のクラスの城島くんかな」
「じゃあ隣のクラスも巻き込まなきゃじゃん」
「で、アンタは誰好きなの?」
「梨野くん」
クラスメイトの口から零れたナオの名前は、刃になってアタシの心を刺した。
アタシ、ナオが好きだ。
だから、変わらない絆が悲しかったんだ……。
気づいた瞬間、胸が苦しくなって、アタシは下はジャージ、上は制服のちぐはぐな服装のまま、更衣室を出た。
最初のコメントを投稿しよう!