お へ ん じ

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苦しくて、喉や食堂がキュッとなった。 アタシは水道の蛇口を上に向けて、思いっきり捻ってがぶ飲みした。 お腹の中は水で満たされてタプタプ揺れるけど、心はちっとも満たされない。 「お、マコ。ついに女装がバレて逃げてきたのか?」 振り返れば、いつものメンバーがいた。もちろん、ナオも……。 「隠れ巨乳でもいたか?あとでこっそり教えてくれよ」 ナオはそう言って笑った。冗談でも、ナオが他の女の子に興味を示してるのは嫌で嫌で仕方ない。 今なら痛みが、クリアに広がる。 「張本さんの下着姿でも、こっそり拝んでくるよ」 アタシはマドンナの名前を出して笑って誤魔化すと、更衣室に戻った。 時計は授業開始2分前を指している。そんな時間に更衣室にいるのは、アタシひとり。 体育の授業は大好きだけど、とても体育館へ行ける状態じゃない。 「神様……。今だけは、許してください……」 柄にもなく神様にお祈りして、声を殺して泣いた。 人を好きになるのが、こんなに辛いものだなんて思ってもいなかった。 そもそも、自分が誰かを、よりによってナオを好きになるだなんて……。 ナオから見たアタシは、男友達のひとりに過ぎない。 好きになった瞬間から、アタシの失恋は確定している。 それでも好きだから、アタシはそばにいたくて、ナオの男友達のままでいると決めた。 バレンタインになると、例の女子グループは、更衣室で話してたチョコレート配布作戦を始めた。 ナオが好きだって言っていた女の子は、緊張した面持ちで、可愛いラッピングの箱をナオに渡していた。 その子はアタシのところにも来て、チョコをくれた。ナオに渡したのとは明らかに違う、ハートがたくさんプリントされた小さな袋。中にはチョコカップケーキが入っている。 「ありがと」 無理やり笑って、お礼を言う。
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