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◇ ◇ ◇
リーザが去り、数日が過ぎた。その数日の間で、ソフィアの世界だけでなく、人々の世界も大きな変化を見せていた。
戦争が終わったのだ。
この報せに、世界中は沸いた。麓の町も歓喜に溢れ、以前のような賑わいを取り戻しつつあった。
人は強い。心が沈み、くじけそうになっても、やり直していく力を持っている。切っ掛けや時間は必要だが、笑顔は戻る。
そして、それはソフィアも同じだ。
ドアに鍵を掛け、大きな鞄を持ったソフィアが前に進む。二、三歩進んだところで歩みを止め、くるりと振り返り、数年暮らした家を見上げた。リーザと共に家族から逃げ出し、暮らし始めた丘の上の家。幸せと悲しみが詰まった大切な家。ソフィアは家に別れを告げると再び歩き始めた。
ソフィアは前に進む決意をした。過去に縛られるでもなく、逃げるでもなく、自分のための新しい未来を探すために。それで、先ずは町で住み込みの仕事を始めることにしたのだ。
「……雨?」
道を進み始めたソフィアの頬に、小さな雫が落ちる。見上げた先には青い空が広がり、今年最後の一頭であろう雲鯨が雄大に泳ぎ潮を吹いていた。
ソフィアは雲鯨を見上げ、祈りを捧げる。
「雲鯨。どうか、大切な人たちを無事に安住の地へとお運びください」
「そして、地上の幸せを見守っていてください」
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