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ソフィアの中で、全て合点がいった。あの花壇も、元々はリーザが世話をしていた。あの空き部屋も、リーザが生活していた部屋。ハンスが気にかけていたものは、全てがリーザに関わりあるものだった。それなのに、リーザの死が受け入れられなかったソフィアは、事実に触れたくない気持ちだけが先立ち、ハンスにきつく当たってしまっていた。
理由が分かり、気持ちが軽くなっていく。そして、ソフィアは思い出した。
「ねえ、リーザ。春に貴女と浸けた果実酒が飲み頃なの。一緒に飲みましょうよ」
「ええ、そうね」
ソフィアは涙を拭うとリーザの手をとり、家の中へと戻っていった。
懐かしそうに室内を見渡すリーザを、いつも自分が座っている席の向かいに座らせると、ソフィアは台所の床下倉庫から果実酒の瓶を取り出した。透き通った赤い液体が、陽射しに照らされ揺らめき輝く。
「綺麗な赤ね。それに薫りもすごく良い」
リーザはグラスに注がれた果実酒を光に透かし、鼻先に運んび甘い薫りを堪能する。
「リーザの指示通りに浸けたんだもの。失敗なんてしないわ」
楽しそうにするソフィアをリーザは笑顔で見つめ、コクリと赤い果実酒を飲んだ。
「……美味しい。ソフィアとこのお酒を飲むことができて良かったわ」
グラスから口を離し、リーザが幸福に満ちた吐息を漏らした。
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