気球部。

1/16
11人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ

気球部。

女が入る、と聞いたとき、谷崎アオは思わず、 「ええー?」 と裏返った声をあげた。 ここ十数年、命懸けの気球部に女子がいたことはない。アオは、それが南羽高校気球部の伝統だと思っていた。 入部を許可した監督は、アオたちに、 「『ええーっ』て、なんだ。女子でも大丈夫だよな?」 と腕組みしながら顎をしゃくり、念押しする。 10人弱の部員たちは、戸惑いはしたものの、ダメだというものはいない。 マジか、という言葉を飲み込む。どんなタフガールか知らないが、空の上は想像以上に精神力がいるのに。 「アオは嫌なのか?」 ニコニコと問うのはアオの相棒、設楽龍一郎。ゴツい名前に似合わず、すらりとした長身に人懐こい丸顔の容姿のせいか、老若男女問わず人気がある。 「リュウは嫌じゃないのかよ」 「それは、その女子によるな」 アオが、ふうん、と生返事をしたとき、ひどく控えめなノックに続き、カチャリ、と部室のドアが開いた。 「気球部は、こちらですか?」 背の低い、黒縁メガネをかけた三つ編みの少女が覗いている。 セーラー服のラインはグリーン。一年の女子だ。 ◇ 「そうじゃねえ! もっと腰落として! ロープの持ち方はこう!」 「はい!」     
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!