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気球部。
女が入る、と聞いたとき、谷崎アオは思わず、
「ええー?」
と裏返った声をあげた。
ここ十数年、命懸けの気球部に女子がいたことはない。アオは、それが南羽高校気球部の伝統だと思っていた。
入部を許可した監督は、アオたちに、
「『ええーっ』て、なんだ。女子でも大丈夫だよな?」
と腕組みしながら顎をしゃくり、念押しする。
10人弱の部員たちは、戸惑いはしたものの、ダメだというものはいない。
マジか、という言葉を飲み込む。どんなタフガールか知らないが、空の上は想像以上に精神力がいるのに。
「アオは嫌なのか?」
ニコニコと問うのはアオの相棒、設楽龍一郎。ゴツい名前に似合わず、すらりとした長身に人懐こい丸顔の容姿のせいか、老若男女問わず人気がある。
「リュウは嫌じゃないのかよ」
「それは、その女子によるな」
アオが、ふうん、と生返事をしたとき、ひどく控えめなノックに続き、カチャリ、と部室のドアが開いた。
「気球部は、こちらですか?」
背の低い、黒縁メガネをかけた三つ編みの少女が覗いている。
セーラー服のラインはグリーン。一年の女子だ。
◇
「そうじゃねえ! もっと腰落として! ロープの持ち方はこう!」
「はい!」
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