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わたしの大切な彼女を殺した組織の中身を知りたかった。ただ、それだけだった。それさえわかれば、わたし自身がどうなろうとも、どうでもよかった。
最悪、ヴァーリ・トゥートゥと道ずれでもいいという発想で、この部隊に所属することを決めていたわたしは、すぐさま承諾書にサインし、己の身体に武装改造を施してもらった。
担当医は、「こんな素敵な身体を弄らせてもらえるだなんて感激!」とちょっと危ないやつだったが、腕は確かなようで、手術から目覚めると体感的にもわかるほど、身体が軽く、拳を握る力が増していた。
新しい身体の機能と、使い方の説明を受けたのち、厳しい訓練を乗り越えて身体の機能をフルに使いこなせるようになったわたしは、遂に第1層・NO・DATAの除染活動に参加することになった。
第3層・FARMから生まれ故郷の第2層・addressを通り、第1層・NO DATAへ。
地上に近づくほど、荒廃した世界が広がり、それはそのまま各階層の格差として表面化していた。第2層と第1層を繋ぐ巨大なゲートは普段は解放されていないためか、土埃がゲートと床の隙間を埋めていた。
重い腰をあげる老人のように、ゆっくり上昇するゲートから湿った暖かい空気が流れてくる。空調が機能している第2層と、放置された第1層の区域がいま、一つになった。
100人以上から成り立つ部隊は、ゲートを解放する前から臨戦態勢を整え、わたしが所属する後衛部隊はゲートからは目を離さずに、スナイパーライフルを一点へ向けていた。
それは過去に、ゲートを開けた瞬間に重度のM・ウイルスに犯された第1層の住民に襲われた事例からの教訓だった。
完全に解放しきったゲートへ続々と前衛部隊がなだれ込む。その中にヴァーリ・トゥートゥの姿もあった。わたしは彼がゲートの奥へ消えるまでの間をライフルのスコープで追い続けた。指先には酷く力が篭っていた。
やがて前線の安全が確保されたという音声が頭の中に流れ、わたし達の後援部隊もゲート内へ向かうことになった。
ゲート内は錆びた鉄の匂いで充満しており、壁に触れると錆びた鉄の粉が付着した。
永遠に続くかのような階段には無数の足跡が残っており、誰かが降ったような足痕は一切残っていなかった。
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