加治木の二太郎

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加治木太郎は学業も運動も優秀だった。しかし「加治木」という苗字によって心無いいじめっこから「加治木まんじゅう~加治木まんじゅう~」とからかわれた。 加治木まんじゅうとは加治木町の特産物の和菓子でふっくらとした白いふわふわの生地に程よい甘さが自慢のまんじゅうで町内は勿論、町外、時には鹿児島各地から買い求めに訪れる人気のスイーツである。饅頭屋は町内に4、5店舗程あるが加治木駅に最も近いある名店が一番の人気で、特に多い時には朝から長蛇の列が出来るほどで午前中のうちに売り切れの札が立つ。  (因みにこれは本当に数少ない地元の者だけが知る裏情報だが、たとえ売り切れの札が立っていても店内に従業員が残っていれば買うことができる) 従業員に声をかけこう言う 「すいません県外から旅行で来た者です。この店の評判を聞いてどうしても食べたくて買いに来ました、どうかどうかお願いいたします」 というと、従業員から小声で「裏口へ来てください」と裏口を案内されこっそり買うことが出来る。それは従業員が帰って食べる残り分なのだ。  そんな人気の和菓子を加治木太郎は一度も口にしなかった。理由は言うまでもない。 加治木太郎はいじめ
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