加治木の二太郎

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っ子に刃向おうと思えば打ち倒すことは可能であった。 しかし武家の家柄に生まれプライドの高かった加治木太郎はその辺の程度の低い連中と同じ次元で争う気持ちすらなく完全に無視していた。 (下民風情が、今に見ていろ) 彼の心の内は高いプライドと野望で満ち溢れていた。婿養子の父親はただの飲んだくれ 母親はまるで自分は今でも高貴な姫君でのあるかのように鏡と高価な日傘、そして化粧品で自らの容姿の美しさを自賛してはその美貌を受け継がなかった息子や娘を見て嘆息する。 そんな母親だった。加治木太郎の妹は望(のぞみ)という名で、無口でいつも自分の部屋に引きこもってはアドルフヒトラーの本ばかり読み漁っては画用紙におどろおどろしい気味の悪い絵ばかり描いている変わった妹だった。いつだったか太郎が名前が望(のぞみ)という名前だったのでたわむれに「のぞみ、お前の望みはなんだ?」 と聞いてみたことがあった。すると彼女は 「人を殺してみたい」 とぼそりと答えたので兄はぞっとしてそれ以上の詮索をやめた。  一方加治木太郎と同じ日に生まれたもう一人の薩摩隼人。名を中村風太郎と言った。 彼は左目になぜか古びた黒い布で出来た眼帯をしていた
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