加治木の二太郎

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。どうも左目が不自由らしい。 そんな奇妙な風貌で体も小さかった為いじめっ子の格好の標的となった。 学校では上履きを隠され、着席をする直前に椅子を引かれて尻もちをつかされたり。 それでも風太郎は無くどころか子供のたわむれに微笑するかのようにむしろにこやかな表情でいじめっ子を眺めていた。しばらくずっと続けていたがいじめっ子たちはその風太郎の期待外れの不気味な笑顔の態度に飽きてしまい、いじめるのを止めた。 小学校の二人はまともに会話しなかった。風太郎は毎日彼におはようとさようなら、そして時折話しかけてきたが、加治木太郎がそれを拒んだ。理由はやはり加治木太郎の下々の者と同じ次元で話したくない、というものだった。  加治木太郎へのいじめはやまなかった。むしろいじめっ子が風太郎に飽きた分、そのしわ寄せが回ってきた。お門違いだが加治木太郎はそれが理由で風太郎を内心憎んでいた。 加治木太郎が小学校の一年で最も小馬鹿にされるのが「検便」の日であった。 検便の容器と注意書きが生徒全員に配られるのだがその注意書きの氏名欄の例の名が 「カジキ タロウ」だったからだ。 この時節が来るたびに「検便~検便~」と時代が時代な
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