加治木の二太郎

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ら切り捨ても辞さぬこの無礼な屈辱に加治木太郎は堪えなければならなかった。 クラスのいじめっこ達は勿論、他の男子、そして女子もクスクスと笑っていた。 どの学年の時も担任はこの毎回の公開処刑をスルーした。いじめの現状が発覚するのを避けたからだ。誰かが、誰かせめて良識な大人が一人でもいたら 「記入例の氏名と同じ名前の生徒がいますので氏名例を変更してください」 業者にたった一報、この電話をするだけでこの不幸な少年は救われたのに。 これが教育の現場の実情だった。 クラスの中で唯一中村風太郎だけが笑わなかった。いやそれどころかまるで自分自身が愚弄されているかのように右目は憤怒の情を浮かべなぜか懸命に左目の眼帯を握りしめていた。加治木太郎は自分の両親そして教師を含む大人たち、そして自分をすべての人間を憎んだ。  二人は中学生になった。 加治木中学は荒れている、という噂を小学生の頃既に皆聞いていたが、入学した加治木太郎はその実情に絶句した。 トイレにはたばこ、授業中にいずこかで鳴る爆竹の爆発音、彼が特に呆れたのは毎日のように鳴らされる非常ベル。もはや非常ベルがなっても驚いて避難しようとする生徒は誰もいなくなり
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