加治木の二太郎

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壁書き」 ある授業の時、美術室の黒板の右側の壁に大きく 「南死ね」と字油性マジックで書かれていました。 生徒達はざわざわと騒ぎ始め、さああの南先生がどんな反応を示すか興味深々でした。 まもなく先生が教壇へ いつも通り出席点呼が行われ生徒達は息を飲みました。 南先生はその自分への侮蔑の言葉がデカデカと書かれた右側の壁にゆっくりと近づき 「ええーみなさん、ここに日本語と思われる文字が書かれていますが、なんて書いてあるかわかる者はいるか?」 沈黙。この厳しい熱血教師に面と向かって言える生徒はおりません。 「『南死ね』と書いてあります」 先生は笑顔ではっきりと言いました。そして続けて 「私はこんなもんじゃ死にませんよ」 美術室は爆笑の渦へ。先生は続けます。 「私を殺せる者がいたら殺してみろ!たとえ地獄の淵から甦ってでも君たちを正しい人間としてこの学校から送り出してやりますよ」  この美術室の壁と先生の演説は伝説となり、以後も変わらぬ厳しくも優しい教育者としてのその真摯な姿は、やがて恐怖とそして同時に尊敬の念をもって生徒達の記憶に生涯残ることとなった。壁の落書きは南先生ご本人の意向により、先生の転勤まで消され
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