加治木の二太郎

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ることはなかった。「不滅の南賢一郎」として。 やがて日常ベルは非常ベルへ戻った。  そして南先生は誰も人を信じられなくなった加治木太郎という一人の生徒の心までも救う。 「検便の日」である。 加治木太郎の中学校生活で「検便の日」が屈辱の日となったのは一回きりであった。 その事実を知った南先生がすぐさま業者に事情を話して改名させたのである。 そして南先生は加治木太郎の前へ訪れ深々と謝罪した。 「加治木!すまないことをしたな、先生はお前の苦しみに気づかなくて、お前が小学校の頃を含めて今までどれだけ辛い思いをしたか、本当にすまない」 「いえ、先生のせいではありませんから」 加治木太郎はそれだけしか言えなかったが、何か心の中にあたたかいぬくもりが入ってくるのを感じた。それ以後、検便の氏名例は「ムロガゲンノスケ」とかいう少なくとも加治木町では聞かない珍しい名前に変えられた。  加治木太郎は陸上部に入っていた。短距離選手として。 その脚力はは優秀で上級生をも上回るものだった。 それがまた心無い者からの妬みを買った。 一方風太郎も加治木太郎と同じ陸上部に入った。同じく短距離選手として こちらはなんとも鈍足でまだその
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