だって、寂しいって言っていいと思わなかったの

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 気になったあたしは文化祭も見に来た。私服でひとり校内を回って写真部の展示に行き着くと、緑のパネルに囲まれた。「植物ばっかり?」と戸惑うあたしに「風景が好きだから。それに高校生になってからのしか飾れなくて」と、ぽそぽそとした声が届く。入口の椅子に先輩が座っていて、「しかも他の部員のほぼ無いの。飽きちゃうでしょ?」なんて言うから、「でも、夏が戻ったみたいで素敵ですよ」と言ったら、「ありがと」と先輩は笑った。  あたしはこの人の写真をもっと見てみたいってすごく思って、それだけで志望校を決めた。地獄の受験を越えた喜びで部活勧誘時期の前から写真部に行って驚かれたけど……もう2年前のことかぁ。 「あたしの部活動は先輩の写真を守ることなので!」 「……来年になったらつぶれるね」 「それもやむなしですね」  先輩の写真が見られないのなら部活に意味ないし、テスト前に先輩のノートが借りられないとなると本気でテストがやばいしなぁ。 「ねぇ、最後の記念に撮ってあげよっか?」 「え、」  色んな心配をしていて聞き間違いをしたかと思ったけど、 「いや?」  先輩はまっすぐに私を見ていた。慌てて首を横に振る。 「でも先輩、人は撮らないって……」 「この子では撮らないけど、スマホならいいよ」  先輩は大事なカメラから手を離して、スマホをあたしに向けてきた。あ、スマホ同じ型。ってそんな場合じゃなくて。 「えっとその、ちょっと待ってください!」  先輩が人を撮るなんて。しかも寝癖だらけのあたしを。え、どうしよ。ピースでいいのかな。     
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