だって、寂しいって言っていいと思わなかったの

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 どぎまぎしているとピピッと音が鳴った。本当に撮ったのか疑わしくて先輩のスマホを覗きこんだら、雪化粧をした背景と真っ赤な顔をしているあたしが映っている。本当に撮ったんだ……。 「へへ。ありがとうございます、先輩」  どうしてだろう。スマホの画面が歪む。先輩へと顔を向けたいのに、顔を動かせない。  はじめて見た先輩の写真、先輩の冷たい横顔からは想像もできないくらいに緑が生き生きとしていて、綺麗で。周りを見向きもせず撮っていた情熱がこうして形になっていると思うとひどく胸が騒がしかった。付きまとうのは迷惑かもしれないと思う時もあったけど、先輩の視線はいつだってカメラの先の海や紅葉や雪や桜に向いていたから、あたしが隣に居ても気にしないだろうって自分に都合良く誤魔化してた。終わる日がくるって分かっていたから余計に、日々の贅沢さを噛みしめていたのに。  ねぇ、先輩。 「先輩の写真にあたしがいるって……変な感じです」 「……そうかな」  なのにどうして、こんなくしゃくしゃなあたしをスマホで撮ったんですか。 「この写真、ちゃんとあたしに送って下さいね」  きっかけを与えたのは先輩なんだから、逃げないで下さいよ。
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