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だって、寂しいって言っていいと思わなかったの
「ねぇ、最後の記念に撮ってあげよっか?」の後輩視点。
親愛以上で恋愛未満。 昨日降った雪が風に煽られて白く舞う中で、先輩はひとりでカメラを構えている。その横顔はとても冷たそう。
「先輩! やっぱり居た!」
大きな声で呼べば、先輩はゆっくりと振り向いた。
「昨日雪が降ったから、先輩ならシャッターチャンスだ、って来てるんじゃないかと思いました! おはようございます!!」
先輩の前まで走って朝の挨拶をすれば、
「単純とでも良いたいのかな?」
呆れた顔を向けられた。
「違いますよー。先輩の写真愛にケーフクしてるんです!」
褒めたのに、先輩はレンズを覗き込んで写真を撮る作業に戻ってしまった。冷たい。後輩が朝早くから会いに来たのに。
「でも卒業式の前に会えてよかった。どうせ式が終わったらさっさと帰っちゃうでしょ?」
「だって、きっとうるさいし」
やっぱり。別れを惜しもうなんてちっとも考えてくれない。
「先輩に告白しようと秘かに胸を焦がしているやつらが哀れですね」
「いないよ、そんなの」
先輩にとって、そんな不特定な人たちとあたしに違いはないのかな。
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