壱  閑鳥翼 死亡

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「やっふ~」 「・・・」  能天気な声が頭上から降って来て翼は顔を上げた。 「誰? あんた」 「・・・脱衣姉さんだよ~」  見上げて一言問いかけると相手は数秒の間をおいてニマアーと嫌な笑い方をした。 「・・・あんた、なんなの?」 「脱衣姉さんだよ? 脱衣姉さんは脱衣姉さん以外の何物でもないよね」 「ふ~ん」  翼はしばし沈思黙考する。  簡単な処世術がまかり通る相手ではなさそうだと言うのは雰囲気でわかった。  冬の服装のつもりなのか夏の服装のつもりなのか全くわからない衣装に身を包んでいて存在自体が何となくちぐはぐだ。  いや、きっとここではどちらかに合わす必要もないのだろう。 「脱衣・・・てことはもしかして脱衣婆のプロトタイプ的な感じ?」 「そーそーそんな感じ全然違うけど」  人を怒らせることに長けた人間は無自覚のうちに会話の主導権を握る。多分そう言うタイプだ。 「それで、私は死んだ訳だ。じゃあここは天国?」 「ううん。地獄」 「そう・・・」  それだけわかれば十分だった。後はどうでも良い。  天国か、  地獄か、  あなたならどちらに行きたい?
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