壱  閑鳥翼 死亡

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壱  閑鳥翼 死亡

 閑鳥翼(かんどり つばさ) 二〇一九年三月一日 死亡 享年一五歳  自分の左手にどす黒い文字で刻まれたその言葉に、翼は特になんの感慨も覚えなかった。  死んだ。  そうか。死んだんだ。  私は、死んだんだ。  だから、どうした。  自分がなぜ死んだのかは覚えている。  自殺だ。  何のことはない。ひと月のうちに自殺する人間は約二千人近く。翼はその二千人のうちの一人と言うだけの話。  あなたが平穏に暮らす日常で、常に起こり続けていること。    理由もあった気がする。  だけど無かったようなものでもある。    例えばいじめだとか、  生きることに疲れたとか、  夢破れたとか、  家庭の事情が複雑だとか、  兄弟に問題があるだとか、パワハラだとかセクハラだとか、ましてや強姦されただとか、近しい人間が死んだわけでもないし、ペットを亡くした訳でもない。  そう、理由をつけるならば、
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