弐  死なば地獄の底まで

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弐  死なば地獄の底まで

 刑部罫(おさかべ けい) 二〇一五年七月六日 死亡 享年十六歳  押し付けるように見せつけてきた少女改めケイの手には黒々と文字が刻まれていた。翼と同じだ。 「これ、ケイの文字変じゃない? 罫って碁かよ」 「もとは片仮名なんだよ。地獄のプロフィールに横文字は記載されないらしい」 「だからって罫?」 「適当なんじゃね? 少なくとも私が決めた訳ではない。お前こそ、閑鳥って変じゃね?」 「閑古鳥の閑鳥。なかなかいい名前でしょ。私はいつもこの名の通り閑を持て余してたけど」 「閑古鳥・・・ひゅー、不吉ぅ」  翼は一応一時限り助けてもらった義理で親し気な会話をしながらもこの奇特な美少女と本気で仲良くする気はさらさらなかった。  それは相手も同じだろうと思う。  つまり、渡り障りのない会話を用いての探り合いは一切不要と言うことだ。 「で、あんた何者な訳?」  いきなりド直球のストレートを投げればケイは素知らぬ顔でそれを避けるように言った。 「何者も何も・・・何物でもない。強いて言うなら死んでるから骨と灰だ。私は火葬だったらしい」  こんなことを平気で言う相手だ。骨と灰相手なら遠慮など不用だろう。 「何で石なんか積んでるの?」 「石積まねーとここは賽の河原じゃなくなるからな。ただひたすらに殺され続けるってんじゃただの一人等活地獄だ」 「言い得て妙。あんたが自分でやってるんでしょ」 「私はマゾだからな」
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