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静かな笛の音色が聞こえてくる。
川のさざ波が耳を通していく。
ほんのりと木材が燃える匂いとおいしそうな野菜の匂いがする。
ゆっくりと目をあけると。そこにはミルが椅子にすわりながらダイコンを釣りのエサのようにぶらさげている。
「こほん」
「やっぱりおきたよーだ」
とレッドウルフの獣人であり背丈はチビで、まだガキが叫ぶ。
「勇者様は野菜が好きだから、ぶら下げておけば目覚めるって、でしょ? セバスダン」
「ですが、フィンリン殿のミントの香りも捨てがたいですし」
「でもね、セバスダン、フィンリンのミントの香りに勇者様は見向きもしませんでしたよーだ」
「そんなにせめないでも、ちょっとへこんでいるんですよ? ミル」
「ごめんねーでもうちの勝ちだし、今日のブロッコリーはうちのものだからねぇーだ」
勇者は頭をかきながら。
「わかったわかった。俺様はどのくらいこの状況で?」
「ほぼ一週間」
「うそだろ」
「うそいっても意味ないよーだ」
セバスダンは頭をさげながら。
「お疲れがたまっていたのでしょう、連続でたくさんの問題を解決しましたしね」
「なによりも、勇者殿は火山弾を何度もはじきましたし、いちおう緊張した命のやりとりを何度もしていると思われますしね」
半分涎をたらし、いつのまにか髪の毛はくるくるになっている。
しまいには涎でよごれたエプロンを着用し、今彼のファッションを初めてみたのだが、いちおう残念だった。
「勇者様――――――――――――――――――――――」
と何者かがドアを開けて、乱入し、しまいにはベッドで横になっていた勇者をおもいっきりハグする。
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