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「変わってるね。君。」
いつの間にか僕の隣に腰掛けていた彼女は、
脇目も振らずに瞬間日記を捲り続けながら、高い声でそう言った。
「ふ、普通です、別に、何も、」
絞り出した声は、あまりにも貧相だった。
裏返り、そして吃る。
そして訪れる無言の時間。何もわからない。
頭が真っ白になる、というのはこういう事だろう。
チラっと横目で彼女を見直すと、割と整った顔をしていた。
季節外れの浅黒い肌に、鋭い目。
帽子から覗く、色素を抜ききったような灰色で、
細いパーマがかかった髪。
小動物を引き連れているかのようなファー使いの足元のブーツ。
数サイズオーバーのシャツに薄いストッキング。
一言で言えば奇抜。
僕が普通に過ごしていれば、
間違いなく関わりあわないであろう人間だ。
気づけば彼女は、僕の瞬間日記を全て捲り終わり、煙草に火をつけていた。半透明の気体を、オレンジ色の唇から流し、彼女はこちらを向いた。
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