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「撮ってほしいんだけど」 寒さのせいか、固まった身体が更に固くなったが、 右手の力を振り絞り、片目を閉じてシャッターを切った。 途端に彼女が吹き出すように笑いだした。 驚いてファインダーから目を外すと、 周囲が再び濁った水色に染まっていた。 彼女はまだ笑い続けている。 僕は再びカメラを構え、何枚も写真を撮った。 現実離れし過ぎた空間に、 気持ちも何もかもが付いていかず、間ももたなかったのだ。 彼女が笑い終えると同時に、僕はカメラをおろした。 「いや、嬉しいんだけど、そういう意味じゃないんだよね」 え?と反射的に聞き返すと、 彼女は整った顔を崩しながら言葉を繋げた。 「うちのサークル、入りなよ」
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