その目の奥には何がいる

奇

ーーー僕は常に、最新の瞬間日記を持ち歩いていた。

1日の全ての講義が終わった後。
大学の裏手にある喫煙所の、
雨風に晒されたベンチにあぐらをかいて座る。
そして、背後の錆びれたフェンスに体重を預け、
夕日に照らされながら煙草を吸い、
瞬間日記を広げ、捲り、眺める時間。

アルバイトも何もせずに、
ただひたすら毎日をダラダラと過ごしている僕にとって、
これが唯一の楽しみの時間だった。

自分がその時何に反応し、周囲が何色に染まっていたのか。
思い出しながらゆっくり噛みしめるように見進めていく。