第七章  黄金の犬

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第七章  黄金の犬

 穏やかな秋空の下、我が家の2代目の柴犬ハッピーが庭を駆け回っている。    この地に引っ越して来たばかりの頃、誰も知り合いがいなくて戸惑った。 気の合いそうな人がいても、もう強固な仲良しグループの中にいて、その中に私が入 っていく隙間はなかった。  そんなある日、一枚のペットショップの広告に惹かれ、その店に向かった私は、1匹 の茶色い柴犬を衝動買いしてしまった。 時期は、ゴールデンウイーク。 一番ペットショップの動物達が、値上がりする時期だった。 しかも、衝動買い。 やってはいけないことを、幾つもしてしまった。 けれども、そのお店がたまたま良心的で、買った犬がたまたま穏やかな性格で、引っ越 した近所にたくさんの犬好きの人が、たまたまいた。 世の中には、明らかに良い出会いと、最悪の出会いがある。 茶色い1代目の柴犬との出会いは、とても良い出会いだった。 それから、犬好きの人から声をかけられ(私にではなく、犬に)知り合の輪が広がって いった。 孤独で詰まらない毎日が、楽しくて忙しい毎日に変わった。  朝夕の犬の散歩をしていると、いろんな事に出くわした。     
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