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(これは、お兄ちゃん、ちょっと痛いなあ)
こんなもの見たら、私でも引くよ。
自分の行為は棚に上げて、沙絵子はページをめくりながら引きつった笑みを浮かべた。そして、名案を思いつく。
(そうだ。これだ!)
それから浩太が帰ってくるまで気持ちの悪い笑みを浮かべながら、毎週月曜日に行われる英単語テストに向けての勉強を始めた。明日は昼から部活なので、勉強をする暇がないのだ。
× × ×
「ただいまー」
浩太が家に帰ってきたとき、沙絵子は得意そうな笑みを浮かべて「おかえり」と言った。
「お兄ちゃん、デートはどうだった?」
浩太は妹の楽しそうな顔を見て、眉を上げる。
「ああ、楽しかったよ。それにしても、どうしたんだ? なんかいいことでもあったのか?」
「いいもの見つけちゃったんだ」
「いいもの?」
浩太が尋ねるなり、沙絵子はくるりと踵を返して自分の部屋へ小走りで戻った。浩太も隣にある彼自身の部屋へ、ゆっくりと階段を上った。しかし、その前に沙絵子が部屋から顔を出した。沙絵子は例の小説を浩太に見せた。
「じゃじゃーん! これ、なーんだ!」
「……ん?」
浩太はそれをまじまじと見た。そして「イッ……!」と首を締められたみたいな変な声を出した。
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