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保険金が下りたという知らせが届いたのは、請求申請した数日後。
30年かかって生活習慣病のデパートたる旦那完成、そしてめでたく保険金5千万円が手にはいった。
……と、思ったのに。
「あなたのご主人の死亡保険金ですが、生前に定期死亡保険金を減額されていまして、更に借入金が御座います。利子込みで精算いたしました所、残ったのはこの84万円と端数、という事になります」
なんてことだ。
今気付いた。
この不本意で、ありえない報せをもたらした元凶は、あの時の白い脚の主。
お金、借りさせたんだ。
やってられない。
遺品さっさと整理して、売り飛ばしてお金に換えて、こんな家出てってやろう。
と、勢いつけて箪笥の中身を片っ端からごみ袋に詰め込んでいたら、見たことのない預金通帳がいくつか出てきた。
セットで、メモと変な小さい機械もまとめて置いてある。
見知らぬ自分名義の預金通帳。銀行をいくつかに分けてある。
中身は10万円ずつ12か月、それを20年分。
あとの10年は100万円ずつ12か月。
利息込みで都合1億5千万円。
利率は微々たるものだけど、残高が半端ないからそれなりにある。
そうだ、自分の貯金だから、相続税も要らないんだ。
メモには、小さい機械がワンタイムパスワードというものを発行する機械だって書かれている。
その使い方と、パソコンからインターネットで自由に引き出せる事も。
そして短く、
「生命保険は、幸子が狙ってると思うから、空っぽにしといたよ。このお金で自由に暮らして下さい」
と、書かれているんだけど。
私のために……?
バカじゃないの?
でも。
それでも、私は……。
やっぱりあの日のあなたと義妹を許せないの。
ああ、そうだ。
とてもいいことを思いついたわ。
おいしい食事で撃墜するのって、ちょっと楽しかったのよ。
だから30年も待っていられたの。
さあ、急いで電話しなきゃ。
「もしもし、幸子さん?
ねえ、ちょっと考えたんだけども、よかったら一緒に暮らさない?
ええ、そうよ、この家でね。
未亡人二人で肩寄せ合って。
ねえ、どうかしら。
毎日おいしいお食事作ってあげるわよ。
ね?いらっしゃいよ、家に」
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