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私はあなたが逝くのを待ってるの。
自分の健康には、とても気をつけて元気で待ってるのよ。
あからさまに殺したら、貰えなくなっちゃうから、あなたが自然に死ぬまで、気長に待ってるの。
ほんとに気の長い話よね。
一体どれだけ健康だったのかしらね、30年も壊さないなんて。
企みを悟られて、受取人を変えられても困るでしょ、だから波風立てず穏やかに待ってるの。貞淑な妻を演じながらね。
痛いから嫌だって、一度断ってからはもう、私の体に触れようともしなかったわね。
絶対に触られたくはないから、好都合だったんだけど。
あれ以来、寝室も別のままの仮面夫婦。
だけど、家事・料理に手は抜かないわ。
毎日手料理を食べさせて、美味しくてつい食べ過ぎるように仕向けて。
下手に運動されても困るから、一見健康食に見えるように仕立てる努力は怠らないわ。
バターやら油やらたくさん入れて、塩分も存分に加味した美味しい食事を出してあげてるでしょ。
だから。
あなたはビチャビチャと汚い食べ方で、私の作ったものを完食すればいい。
そうすれば、私が待ち焦がれた日が来るのよ。
心も体も自由になる日がね。
ただ、ぽっくり逝ってもらわないと困るんだけどね。
まあ、大丈夫よ。
そのために私、養ってやってるだのいい身分だの言われながらも専業主婦を通してるんだから。
もしもあなたが倒れたら、一刻も早い通報を……。
なんてことをされないように、私が傍で見張ってるのよ。
ええ、極上の笑顔でね。
「なんだか疲れたな」
「あら、大丈夫ですか」
「うん、なんとなく胃がもたれる感じがしてな」
「無理にお饅頭なんてお出ししなければよかったですね」
「いや、妹がくれたものだからな」
「そうですけど……」
私の兄には、挨拶すらしなかったくせに。
訪ねてきたって上がりもせず、用件だけ済ませてさっさと帰る兄に、一度だってお茶すら淹れてやったこともなかったのに。
あんたが、早く帰ってもらえよ、っていう目で見てるから。
よほどにやましいことでもあったのかしらね。
私の兄をまっすぐに見ることも挨拶もできないなんて。
もう、二度と顔を見ることも出来なくなってしまったけれど。
兄さん、ごめんね。
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