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4
夕方寝室を見に行ったら、夫は冷たくなっていた。
急いで救急車を呼んで、親族に連絡して、病院へ向かってもらおう。
葬儀の間は悲しさと、先立たれた悔しさを纏うんだわ。
あの日見た光景を脳裏に再現しながら。
あの時感じた、
足元から崩れそうになるような衝撃を思い出して。
溢れる涙が、途方にくれる未亡人らしく見えるよう振る舞いながら。
あなたの巨体が火葬場で、異界へと続く扉をくぐる時には、意識すら失ってもいいんじゃないかしら。
それにしても。病院に駆けつけてからというもの、ずっと泣き叫んでる義妹がうるさすぎて苛々する。
湯灌、納棺、通夜、葬儀。
事あるごとに泣き叫ぶ義妹。
そろそろ、泣き過ぎで何か変だと周囲も気づく頃。
「幸子さん、ご主人に先立たれてからお兄さんだけが頼りだったものねえ」
「昔から仲のいい兄妹だったしね」
「でも、ずっと一緒に居たわよね、お兄さんが結婚するまで」
「ああ、そうかも。案外怪しかったりして」
「しっ、ちょっと不謹慎だわよ、ここじゃ」
「あっ、そうだったわね」
「あとでファミレスでも寄ってく?」
言わないこっちゃない。口さがない連中が他人とは限らないのよ。
身内だって虎視眈々と、面白いネタを探してるのよ。
だから、隠し事は細心の注意を払って実行するべきなのよ。
邪魔されないようにね。
詰めが甘いわ、幸子さん。
ええ。昔から、ね。
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