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学校を終え、部活をしていない生徒は帰路へ着く頃、外には雪が静かに降っていた。  冬でもあまり雪が降らないこの地にはとても珍しく、いつも騒がしい生徒はより一層と騒がしくなり雪の降る中を駆けていた。そんな生徒とは違い僕は一人、雪の降る空を眺める、高校生、行動や話す言葉は落ち着いていてもまだ子供の心は残っているらしく、心は微かに踊っていた。真っ直ぐ帰るのは勿体ないと、帰路と反対側の方に歩き出した。この気まぐれでした寄り道がこの物語の始まり。  寄り道の途中で見つけた人気(ひとけ)のない公園の池の水面に浮かぶ雪を見て花筏(はないかだ)みたいだなと心で呟いた刹那、強い風が吹き暴れる髪を抑え瞳を閉じる、風が止むと瞳を開き少し乱れた髪を手櫛で整えている時、ふと横を見ると、知っている顔が一つ、地味目で目立たなく、休み時間は読書か、カメラの小さな画面を見つめているのが印象なクラスメイト。まぁ、僕も同じようなものなのだけど、 少年「…。こんにちは。」  静かであまり目立たないといっても、ある時微かに広まり本人に届くことなくすぐに消えたクラスの男子たちの噂、「○○さんって結構綺麗な顔しているよね。」という言葉が頭に流れてきた。何かを撮うとしているのか眼鏡越しにカメラのレンズを覗く君に一瞬にして目を惹かれ、見惚れた。頭で考えることをする前に声をかけてしまった。 少女「…?」  こちらの声に気が付いた君は、カメラを少し下げこちらを不思議そうに眺めている。話したこともない、いや会話とは言えないだろうが一言だけ言葉を交わしたことのあるクラスメイトからの突然の声掛けには返事は帰ってこない。もしかすると僕のことを覚えていないのかもしれない、一向に返ってくる様子のない返事と向けられる視線に僕は動揺し目を逸らし、次になんと声をかければいいだろうと頭を回転させ精一杯考え言葉を音に出した。 少年「…何撮ってるの?」 少女「……景色だよ。」  彼女に問いかければ、少し遅れて返事が返ってきてホッとする。 少年「池の?」 少女「うん…、でも私にとってはただの公園の池じゃないの」
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