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由美子はそそくさと玄関に入り、新聞やチラシはリビングに置き、例の封筒はエプロンのポケットに慌てて押し込んだ。 「お母さん、おはよう。どうしたの?慌てて」と長男の茂夫が声をかけてきた。 「え?おほほほっ!やあねえ。何もないわよ」と由美子は早速、朝食の用意に取り掛かった。 「ふーん」 茂夫は小六のくせに、やけにませている。勘も鋭く、よく由美子が隠れて間食している事も知っていた。 「だから太るんだよ」と女心を傷つける発言を、さらっと言ってくる。 「ほら、陽子も起こして来て」と由美子は茂夫をけしかけた。 陽子は小三の妹で、どちらかと言うと甘えただ。 いつも茂夫について回り、近所でも仲の良い兄妹と評判である。 「分かったよ」と茂夫は、何となく浮かれ気分の母親の背中を見つめた。
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