序説

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そこには、見た目でいうと柚里香と同年代だろうと思われる青年がパイプ椅子に腰掛けており、客用と思われる同じパイプ椅子と小さな机が備え付けられている。 さながら、二者面談スタイルといったところか。 (運命を視るってどういうこと?) 私はその〈運命〉という言葉に引き寄せられるかのように青年の前に立ち、言葉を掛けてみた。 『すみません。運命を視るってどういうことなんですか?』 ボーッとでもしていたのだろうか?ハッ!?とした表情で私を見た青年が口を開き、どもり口調で返答してきた。 「あっ💦す、すみません💦ちょ、ちょっと考え事をしてたもんで💦 そ、それで、何かお悩み事ですか?」 (だ、大丈夫かなぁ💦) 「お立ち頂いてるのも何ですから、どうぞ、その椅子にお掛けになって下さい」 私は言われるがまま、そのパイプ椅子に座るとギィ~ギィ~とまるで老婆の悲鳴の如く物凄いキシミ音を発し、今にも空中分解してしまいそうだ。 「では、左右どちらでも良いので手を机の上に置いて下さいね!」 『えっ、私まだ視てほしいなんて言ってないんですけど💦 それにお金も掛かるんでしょ💦』 「大丈夫ですよ。お代なんて頂きませんから♪ ほんの少しだけあなたの過去と未来を覗かせてもらうだけですから」 私は渋々、右手を机の上に差し出すと青年は両手に嵌めた黒い皮手袋の左手側を脱ぎ、私の右手を覆い被すようにそっとその左手を添えてゆっくりと目を瞑った。
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