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時刻は11時半を回り、もうそろそろ正午を迎えようとしていた。
勤務先であるスポーツジムには体調不良という名目で休ませてほしい旨の連絡は既に入れてある。
君崎さんからの電話ではお昼頃には凱弦を送り届けると言っていたが本当なのであろうか?不安と緊張の所為なのか普段めったに汗を掻かない私がこの時ばかりは脇から大量の汗を吹き出してしまっている始末である。
〈ウゥ━━━━ン♪〉
正午を知らせるサイレンの吹鳴が町に響く。
時間にして、ものの数秒だと思う。普段なら全くと言っていいくらい気にならないこの吹鳴がなんだか今日は一段と鮮明に聞こえてくるような・・・そんな気がした。
サイレンが鳴り止むと、それとほぼ同時ぐらいに〈ガラガラガラ〉と玄関の開き戸が開放される音がした。
私は(帰ってきた!?)と頭の中で叫びながら〈ドスドス〉と大きな足音を立て、玄関へと駆けてゆく。
「た、ただい………マ、ママ💦」
凱弦の姿を見るや否や、凱弦が「ただいま」という言葉を言い終えるよりも先に私は私よりも一回りも大きくなった愛しい我が子を強く抱き締めるのであった。
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