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『この部屋で最後ね……』
「はい……」
一ちゃんがノブを掴み、そおっとドアを開けていく。
朝とはいえ、どんよりとした雨空と遮光カーテンとが相まみあって部屋は薄暗く、そして何より重たかった。
(間違いなくこの部屋に居る!)
私をそう思わせるくらい、部屋の空気が直接私の肌に何かを訴え掛けてくるのが分かる。
数秒後、ドアを開けた一ちゃんが後ろにいる私の方に振り向き、そして目が合った。
その表情からして、どうやら彼女も私と同じ様なモノを感じ取ったのだろう。とても不安げな顔をしている。
(何だかヤバい気がする……ゴクッ)
呑み込んだ唾の音が響いた。
こんな緊張に緊張を上塗りしたような感覚を持つのは生まれて初めてで、思わず身震いした。
しかし、それでも!━━と、まるで意を決したかのように無言で頷き合った私達は、この暗く重たい部屋の中へと入っていくことにしたのである。
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