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━━5月31日(日)
「休みのところ本当申し訳ない麻衣子君!」
『いいえ先生♪むしろ暇を持て余すくらいならレポートの一つでも片しておいた方がよっぽど気が紛れますんで♪ほらほら早く奥様と息子さんのところに行ってやって下さいな♪』
「あ、ああ💦そ、それじゃ行ってきます」
『はい♪いってらっしゃい先生♪』
黒瀬先生は月に2~3回のペースで心理カウンセラーである奥さんと大学生になる息子さんの三人でよく食事に出掛けることがある。
しかも、只今絶賛別居中の奥さんと息子さんに会える日の先生は決まってグレーの浴衣を着用。それに伴い、牛乳瓶の底の様な黒縁眼鏡を外すと鳥の巣状態のボサボサ頭も綺麗にセットするという具合だ。
『さてと♪早いとこ片付けちゃうとしますか♪』
数十、数百という膨大な量のレポート用紙。そこに書かれた学生達の色とりどりな文字の群れ。綺麗に書かれた字もあれば、もちろん書き殴ったような非常に読みづらい字だって存在する。私はそれらを一字一句間違えることなくPCに打ち込まなくてはならないのだ。
・ ・ ・ ・ ・
『んん~大体こんなものかしらね?』
取り敢えずPCへの打ち込みは終了。残すは打ち間違いの有無の確認だけだ。
でも、正直思うことがある。
どうせ大学入学時に学校側から専用のノートPCを買わされているのだから、実際この作業って学生達が各自でやればいいのでは?って・・・。
〈ガチャ〉
ふと仮事務所のドアが開く音がした。スタスタという足音がゆっくりと此方側に近づいてきているのが分かる。
そして、足音が止まった。
「……」
『あら♪思った以上に早く来たのね♪』
「……」
『あらあらそんな顔しないで♪
だってここに来たってことは、それなりの覚悟ができたからここに来たってことなんでしょ♪
ねぇそうなんでしょ♪
い・が・わ さん♪ クックックッ…』
━━井川 岳史消滅まで残り271日━━
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