52人が本棚に入れています
本棚に追加
/921ページ
━━11月のある日のこと━━
『良かった……わざわざすいませんでした!
じゃあ25日(月)の11時に店に集合ってことでよろしくお願いしやっす!』
令美さんとの通話を終えた俺の足は自然と工場へと向かっていた。
お客様であり、お茶出しのお手伝いさんでもある芹澤 柚里香さんがうちの元工場長の井川 岳史さんだって事を知っているのは俺を除いてこの店舗内で3人いる。
営業の中居 一崇、フロントの丸橋(旧姓:坂上) 麻莉彩、そして整備士の遊佐 彌月である。
その中でも細かい内部事情を把握しているのは遊佐だけだ。
『遊佐ちょっといいか?』
「なんすか課長?何か用っすか?」
遊佐はオイル漏れ修理のため、車両から降ろしてあったエンジンの分解整備をしている真っ最中だった。
深く腰を落とした状態から上目遣いで俺を見る表情がなんとも愛らしい………が、相変わらずの男口調である。
『次の月曜日、暇か?』
「飲みには行かないっすからね!」
(飲みに!?案外それもいいかも!)と邪な気持ちを抑えつつ、
『ち、ちげーよ💦飲みになんか誘ってねーよ💦お、お前さぁ俺をそんな目で見てたんかよ💦』
「だって課長ってったら酒かゴルフか女遊びっしょ?」
『………』
「んで、月曜に何かあるんすか?」と、あながち間違いではない言葉に無言となってしまった俺に気を遣ったのかどうなのかは定かでないが、逆に彼女の方から月曜日の事について訊いてきてくれたことに安堵した。
最初のコメントを投稿しよう!