第4層・CITY ゴールデン・ガール

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第4層・CITYほど人間らしい生き方をできる場所はない。そういう思いを抱えながら第2層・addressから移住したわたしに待っていたのは、人間の果てしない欲望に押し潰され、疲弊した住民達だった。 本来、このHALL全体は共産主義の考えをベースに政治を行なっていたはずだ。事実、ベーシックインカム制度が存在し、富を平等に分け与え、無料でM・ウイルスの抑制剤を支給されていた。第2層・addressではそれが当たり前だった。 だけど、ここは違った。 ここは忌まわしき旧時代に蔓延し、地上を破壊し尽くした元凶。資本主義が主流だった。 富む者はより豊かに、持たざるものは全てを奪われる。それがこの階層での正義だった。 人間を保護する名目で作られたHALL。それを否定するかのように煌びやかに彩る街並みに、わたしはもう昔のような感情を持つことはできなかった。 わたしは自身の機械化を抑えるために毎日の生活費を削り、本来支給されるはずのM・ウイルス抑制剤を裏路地で転売価格で買取、移住する際に作った借金の返済にお金を回しどうにか命を繋いでいた。 なんども第2層へ戻りたいと思った。けれど戻ったところでわたしが抱えた借金を返すあてもなくて、結局、希望はここしかないと悟るしかなかった。 いま、わたしはお金欲しさに娼婦をしている。 娼婦はお金になった。機械化が進み、なにも感じることがなくなった性器を夢中になってしゃぶる男を見下し、わたしは演技し続けた。 そういう生活をしばらく続け、金銭面はだいぶ改善され、借金も全て返済できたのに、わたしはまだここにいる。 娼婦になることで、得た富と引き換えに、わたしは本当の自分を失っていた。 広くて、清潔は空気を供給し続ける豪華な部屋には、毎月必ずM・ウイルス抑制剤が届けられた。どうやらこの階層は、一定の裕福層にはM・ウイルス抑制剤をきちんと支給しているらしい。 それがわたしの正気を失わさせるきっかけになったのだと思う。 優越感というやつだろうか。これがこんなにも気持ちの良いものだとは知らなかったわたしは、それにどっぷりとはまった。
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