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鐘が8つ鳴る。ノクスの大好きな時間になった。
あれから2ヶ月。ほとんど毎夜欠かさずルクスが来てくれた。甘いものを持ってきてくれた時、喜んで食べたが、次の砂糖菓子の時にノクスは断った。
「これは食べるね。でもカロレッタとオードリーに悪いと思うんだ。もう持ってこないで」
「我慢すること無いのに」
「ううん、我慢じゃないよ。二人にもらえる時にこんな味があるのかって驚きたいから」
そんな律儀なノクスがルクスは好きだった。人を思う気持ちはノクスに敵わない。
「今日はどうしたい?」
「少し熱があるの。だからここでいろんなことを教えて」
「熱? 大丈夫か?」
「時々そうなるんだ。僕は体が弱いから」
確かにノクスは体も細くてか弱い。横にならせて毛布をかけて、ルクスは話し始めた。
この土地のこと。城の様子。他の貴族たちとの状況。父の強さ。
「『おかあさん』っていう人は? ルクスにもいないの?」
「去年、病気で死んでしまったんだ。僕を産んでから体が弱くなったと聞いていた。……もしかしたら僕のせいかもしれない、僕が生まれたから…」
「『おかあさん』ってよく分からないけど…優しい人だってこの前言ったでしょ? そんな風に思ってないと思うけど。僕はルクスと会ってから…『会う』って言うんだよね? こういうこと」
「そうだよ」
「会ってから、ルクスがいい人だって分かる。きっと『おかあさん』もそう思ってたよ」
「……ありがとう。嬉しいよ、そんな風に言ってくれて」
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