418人が本棚に入れています
本棚に追加
『季節』というものを知った。
ルクスと出会った頃は『5月』だったという。それは『夏』の始まり。
そして恐ろしく暑い『夏』を知り、流れるほどの汗をかくことを知った。
さわさわと涼しい『秋』を感じ、夜は美しい虫の音色で心を満たした。
『冬』は衝撃的だった。身を切るような風。手のひらに受ける溶ける水。それは『雪』というのだと聞いた。色は『白』。ひんやりするシーツの色。
そして、『春』
暖かな風が吹き始め、『花』が『咲く』。香りで溢れる空気。上から降り注ぐ暖かな暖炉のような温もり。
その『季節』が5回も過ぎた。
ルクス、ノクス、13歳。互いに真実を知らぬまま、5年が過ぎた。
周囲の貴族たちが勢力を伸ばし、外交が穏やかなシルウェステル伯爵の領地を脅かしつつあった。それでも蛮族よりはマシだ。
蛮族は礼儀を知らない。話し合いを知らない。村から何人かの女たち、少女たちが消え始める。農地が荒らされ、作物が奪われる。
伯爵は兵の見回りを強化した。農家の若い男たちにも戦い方を教える。
「兵が間に合わなくても、自分たちで力を合わせ家族と作物を守るのだ」
最初のコメントを投稿しよう!