誕生の儀式

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  『季節』というものを知った。  ルクスと出会った頃は『5月』だったという。それは『夏』の始まり。  そして恐ろしく暑い『夏』を知り、流れるほどの汗をかくことを知った。  さわさわと涼しい『秋』を感じ、夜は美しい虫の音色で心を満たした。  『冬』は衝撃的だった。身を切るような風。手のひらに受ける溶ける水。それは『雪』というのだと聞いた。色は『白』。ひんやりするシーツの色。  そして、『春』 暖かな風が吹き始め、『花』が『咲く』。香りで溢れる空気。上から降り注ぐ暖かな暖炉のような温もり。  その『季節』が5回も過ぎた。  ルクス、ノクス、13歳。互いに真実を知らぬまま、5年が過ぎた。  周囲の貴族たちが勢力を伸ばし、外交が穏やかなシルウェステル伯爵の領地を脅かしつつあった。それでも蛮族よりはマシだ。  蛮族は礼儀を知らない。話し合いを知らない。村から何人かの女たち、少女たちが消え始める。農地が荒らされ、作物が奪われる。  伯爵は兵の見回りを強化した。農家の若い男たちにも戦い方を教える。 「兵が間に合わなくても、自分たちで力を合わせ家族と作物を守るのだ」  
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