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14歳の誕生の祝いで、城中が湧きたった。民からも果物や織物などが届けられる。広間では女たちの舞いが披露され、皆が浮き立ち、興じていた。
「今日はそなたの誕生だけではなく、婚姻の儀式でもあるな。エレナ姫に優しくするのだぞ」
それは、結婚だ。エレナはクィントゥス侯爵の娘。位は伯爵の一つ上だ。クィントゥス侯爵はやはり領土を守るために勢力を伸ばそうと伯爵家との和平条約を望んだのだ。
その夜は誕生祭と婚姻の儀式で一晩中、宴が続いた。
地下ではノクスにカロレッタが、日ごろ食べられないような料理を心を込めて出した。
(お気の毒に……上ではルクス様が誕生と婚姻の儀式を受けられているのに……)
「これは、なに!? 美味しい!」
「子羊の肉を焼いたものです。パンは焼き立て。デザートはフルーツのシロップ漬けですよ」
「デザートがあるの!?」
「今日は特別な日。14歳の誕生日ですからね」
「14歳は特別なの?」
「そうですよ」
本当は成人の儀式でもある。もう子どもではない、一人前に何かの責任を負う年だ。
(けれどそんな日は一生来ないのでしょうね……)
カロレッタもオードリーも不憫でならない。
食事を終えて、いつもよりゆったりと湯の中に入ることが出来た。贅沢な気分だ。
7つの鐘が鳴る。
「さあ、おやすみなさい。良い夢を見ますように」
カロレッタはベッドに入ったノクスの頭を何度も撫でて出て行った。
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