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8つの鐘をわくわくと数えていた。
誕生の日だとルクスに伝えたい。子羊の肉がどんなに美味しかったか。フルーツのシロップ漬けは夢のような味だった。嬉しい気持ちを分かち合ってほしかった。
けれど、その夜ルクスは来なかった。
3日経ってルクスがやってきた。また熱が出ていたノクスはベッドに横たわっていた。
「ノクス? 来たよ」
「ルクス! どうしたの!? 熱が出てた? ケガしたの?」
「違うんだ……ごめん、来られなくて。僕は結婚したんだよ」
「結婚?」
「ああ……ええと……契りを交わすこと。女性と」
ノクスには見えないのにパッと顔を赤らめた。
「一つのベッドに入ること」
「入ってどうするの?」
どう答えていいか分からない。
「また今度教えるよ。それでいい?」
「うん、いいよ。あのね! 伝えたいことがあったの。僕は14になったんだ!」
「え? ノクスも?」
「も って……、じゃあ、ルクスも?」
「14の誕生の儀式をしたよ。僕らは同じころ生まれたんだね。そうかぁ、今まで誕生の日はささやかな祝いだったから言わなかったんだよ」
そこまで言って気がついた。
(ノクスには儀式が無かったんだろうか……決まった女性もいないんだろうか)
でも聞くのを躊躇った。そんな華やかなことがあったようには見えないから。
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