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川を渡ってくる音がする。声がした。
「村を焼き払うんだ。兵が外に出た隙に城に入る。伯爵と息子を殺せ! 姫は……連れて帰ろう」
含み笑いが聞こえる。ルクスの頭の中がカッと熱くなった。
(民が、城が、エレナが、父上が……)
このままではいけない。まずノクスを安全な地下へ移さなければ。ノクスに囁いた。
「すぐ地下に戻ろう。君はそこで静かにしてるんだ。僕は父上と兵たちに知らせに行かなくちゃならない」
「ルクス、大丈夫なの?」
震えるその声に、ノクスの肩を抱き締めた。
「ここの兵は強い。安心するんだ」
見つからないように城に入り、地下のベッドまで連れて行った。
「ごめん、手当てをする時間が無い。また来るから。じっとしてるんだよ」
「分かった。僕は大丈夫だから」
ルクスは走って上に登って行った。
(燃えてる!!)
外に赤々と揺らめく火が見えた。そして城の中にも。
兵たちが突然のことに騒然としている。父が鎧も着ずに、それでもよく通る凛とした声で叫ぶのが聞こえた。
「戦え! 城から蛮族を追い払うのだ! 引くな、戦え! 我らは強い!!」
声に応える兵たちの怒号が城を揺るがす。
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