4/8
前へ
/228ページ
次へ
   辺りの敵を倒し、ルクスはエレナを追った。叫ぶわけには行かない。フェーレの丘に身を潜めながら向かう。  しかし……その道すがら、小間使いの死体を見つけた。 (エレナ!!)  妻を見つけなければ! ルクスは走った、丘につけばきっとエレナはいるはずだ。  そして、ラーナーの姿を見つけた。相当切り結んだのだろう、体中から血が流れ出ていた。その周りに二人の兵も倒れている。 (エレナっ!!)  変わり果てたエレナがそこにいた。ドレスが破れ、胸元が見えている。エレナの首からまだ血が流れていた。手にはしっかりと短剣が握られている。  一目で分かった。エレナは穢されるよりはと、命を絶ったのだ。その体を胸に抱き、ルクスはむせび泣いた。  後ろから近づく気配にすっくと立ち上がる。振り向きざま怒りに任せて、斜めに切り落とした。何度も滅多切りにする。  治まらない怒りの中で、エレナの手を持ち上げてキスを落とした。 (済まない、エレナ。後でちゃんと葬りに来るからな)  ルクスは城に取って返した。こうなっては城が危ない。父の隣に立たなければ。  
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

418人が本棚に入れています
本棚に追加